葬式のこととか、法名のこととか
島田裕巳『戒名は、自分で決める』
島田裕巳が『葬式は、要らない』を書き、発表したころ、「孤独死」問題や、ちょうどNHKの『無縁社会』と時期が重なって、島田の本も多く読まれたらしい。
こんなふうに書いている。
「ただ、果たして、たった一人で人知れず亡くなる「孤独死」が本当にわびしいものかどうかについては議論がある。(・・・それは=引用者付記)その人が最期まで自分の力で生きた証でもある。」p4
.
「自分の力で生きる」という意味
『無縁社会』は、その最後の方に、
「誰にも迷惑をかけたくない」とひとりで生きる人たち――。
「迷惑なんかじゃない。頼って、頼られて、それでいいじゃないか」
……と、書いている。
この「誰にも迷惑をかけたくない」という想いは、多くの人々が教え込まれて、思いこまされてきたまちがった「常識」だろう。およそ、人間だれしも、人に「迷惑」をかけないで(人の世話にならないで)生まれ、育ち、生きて死ぬことなどできはしない。それを「都合」によって「頼る」とか「迷惑」とか「お世話」と言い分けているだけだ。
とくに悪質なのは、たまたま行政・教育・高い社会的地位などにいるものが「指導的」位置のものが「迷惑をかけるな」と言い、迷惑をかけない人間こそ立派な人間だとくどいほど説教し、社会意識を作り上げてきたことの責任である。近年しばしば喧伝される「自己責任」論も典型の一つだろう。
そうして、個の確立(と、自由)ではなく、個の孤立(バラバラにして支配する)を推し進めてきた「支配的意図」こそ、これら多くの問題の根本原因をつくった。
わたしたちは、そうした視点を忘れるべきではない。
島田裕巳は、結局「戒名(法名)なんていらない」というわけだが、それはそれでいい。自分で決めるのはすでに私はしたことだ。つぎは、ついでに『葬式は、要らない』を読んで、そのことについて考えておきたいと思う。
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