いま、福島は・・
- 作者: 広河隆一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2011/08/20
- メディア: 新書
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「彼女によると今、福島県には様々な立場の人がいる。不安だから逃げたいという人、放射能が怖いけれど嫌々ながら福島に残っている人、本当に大丈夫だと思っている人、そして、病気になるかもしれないけれど、ここで生きていくしかないと割り切っている人。」(p136)
こういう人々が、いや、もっと多様で複雑な人々が、不安であるが故の疑心暗鬼のなかで暮らしているに違いない。
「新しいコミュニティ」が一部ではしきりに提唱されているが、それは息が詰まりそうな日常から逃れ出したい気持ちの表現だろう。上からのコミュニティづくりとは全く異なるけれど、切実すぎて現実逃避的でさえある。
「本当に大丈夫だと思っている人」は、まずいない。比喩に過ぎないが1%から99%の範囲にまたがっているにすぎない。しかも、日々時々その%はかわる。
「ここで生きていくしかないと割り切っている人」も、状況が変われば、どのようにでも考えを変える必要に迫られるだろう。
私自身が、いまそこにいるわけではないから、これらのことについて語るのは他人事に聞こえるだろうが、この状況はけっこう耐え難い人間関係をつくってしまうと思える。
玄侑宗久さんが書くものの背景にはいつもこんな状況がはりついているように思える。
先日、NHKTVで「滝桜」が取り上げられた番組に出演した玄侑宗久さんは、いつもより浮かない顔をしていた。
滝桜はまだ1分咲きにすぎない肌寒い夜の中継だったが、それにしても番組は安易に「復興」を語りすぎ、安易に「元気」を強調しすぎていた。ほんとうは「こんなんじゃあない」と誰が言ってもおかしくないが、寒い「美談」の中で番組はおわった。
福島の人々の「言えない」ことばたち・・・。
私(たち)が推察することを期待しないで、言いたいことをぜんぶ言ってほしいと思う。