無縁社会とは?
NHK取材班著『無縁社会ー“無縁死”三万二千人の衝撃』を読んだ。
- 家族、地域、会社などにおける人とのきずなが薄れ、孤立する人が増えている社会のこと。 現代社会のこうした一側面を、NHKが「無縁社会」として取り上げたことで注目され、この言葉は2010年の「ユーキャン新語・流行語大賞」(現代用語の基礎知識選)のトップテ.. 続きを読む
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「無縁社会」という言葉は、おかしなことばで厳密に言えば、最初から成立しがたい。社会それ自体がいわば「縁の集積」だからだ。
因縁とか縁起の思想は、仏教の基本概念だろう。
私あるいは人間は、「縁」無くしては存在しない。
それを押して「無縁」というのは「…に見える」といった見方の問題だということを前提とする必要がある。
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無縁死が価値のない「死」だときめつけないで
「無縁死」して引き取り手のない遺骨のおおくがあるお寺におさめられるらしい。そこの住職さんが、
「みんな、それぞれの一生があるのに、ただ人生の終盤地点で孤立したというだけでね、そんな価値のない一生となってしまっていいんだろうか。」p84
といわれるのは早急ではないか。
その他、いろいろ議論したいことはある。
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「無縁」とは、たんに「絆」を失った結果か
そんなことはないだろう。「無縁」に対して既存の(?!)「絆」を回復させることがはたして、必要で、唯一の対処法なのか。
本書は、最終章を
「絆を取り戻すために」
という、タイトルでしめくくる。この取材の話は本書で最も感動的だった。こういう人生があること自体に救われる思いがする。
だが、この生き方、死に方に、ただ
「絆」
などという復古主義的な印象が強い言葉をおしつけて、ほんとうに「意味を限定」できるだろうか。
もっと、個人が自由を求めて四苦八苦して生きていく、そのことの大切さをこそ認めるべきではないのか。私は、強くそう感じた。 (つづく)
- 作者: NHK「無縁社会プロジェクト」取材班
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/11/12
- メディア: 単行本
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