あるクラゲ
――どこかのTVで「くらげ」のことをやっていた。
あるくらげは、事故に遭うか、食べられるか、しない限り、
ずっと生き続ける、という。
ある時間生きたら、急に縮こまって、生まれたばかりの子どものように、
新たな時間を生きはじめる…というのだ。
つまり、死ぬことがないから、死体を残すこともなく、
生まれ変わるわけでもないから、生まれると言うことがない。
おもしろいやつだ。
子どもを産むのではなく、同じ個体が、子どもになって成長し、
やがて老いると、また子どもに戻る
雄も雌もいらない。親も子も必要ない。
繁殖はどうするのか、わからない。
世代交代などないから、
遠い昔からそうして生きてきたのだろう。
そのくらげが
われわれはどこから来たのか。
われわれは何者なのか。
われわれはどこへ行くのか。
と、問うなら、なるほどその気持ちはわかる。
だが、ゴーギャンのまねをしたかのように、
同じ問いを問う人間は、最初から道を踏み外している。
このくらげは、たぶん、たいして進化しない。
生まれて生きて、子どもを作って、老いて死んでいく
それが、人間の「いのち」なのだ。